プラヌラ幼生の旅

年に一度。今の時期だけ・・・。

プラヌラ幼生を、

体内に宿したアワサンゴ。

いつも、季節によって様々な色合いの緑を

楽しませてくれるアワサンゴですが、

この時期だけは、

黄土色のような、黄が強い色彩になります。

ポリプの中心から、

順番待ちしたアワサンゴの赤ちゃん、

プラヌラ幼生が、放生されます。

ポンっと。

たいていは一瞬の出来事で、

後を追うのが大変です。

約1~2㎜・・・。

ゴマ粒のような大きさです。

時々、二股の子がいます。

プラヌラ幼生は、

まるで意思を持っているかのように見えます。

潮流に身を委ねて流される他の浮遊物とは、

明らかに動きが違うのです。

ふよふよ~ ふよふよ~ と、

地面に着きそうになっても 再び泳ぎ出し、

気に入る場所が見つかるまで、

その旅は続くようです。

早く、良い住処が見つかるといいですね。

NIGHT DIVING -浮遊系ー 太刀魚の幼魚

2018/10/8 レモンの森

3万ルーメンのライトに集まるプランクトンたち。

その中に、折れたカッターの刃のような、

硬質な輝きが見えた。

もしかして、と手の平ですくい上げると、

それはやはり、太刀魚の幼魚でした。

約2㎝。

成魚と同じ特徴である、「太刀」の輝きを、

この若さで既に持っていたのが、驚きであり、感動でした。

 

スチール缶の銀の色合いが、角度によって変わるように、

太刀魚の幼魚はライトの光を受けて、

桃色にも あんず色にも変化する オーロラのようでした。

白色化したアワサンゴ

2017/10/01 レモンの森

水温も上がりきり、元気がなくなってきたアワサンゴのなかには、

褐虫藻が抜け出し、真っ白になってしまったものたちがいます。

部分的に白くなることはありますが、

一株分、全てが白くなるのは、珍しいかもしれません。

 

再びアワサンゴの活性が良くなり、

褐虫藻が戻ってくれば、

いつもの元気な緑色に戻ることができます。

 

しかし、褐虫藻が戻らなければ、待っているのは死です。

この個体は、冬を越せるのだろうか・・・。

ざわざわと 波に揺られ・・・

向こう側が透けて見える、透明な茎。

ありのままの姿を、これからも見守っていきたいです。

元気な時も、そうでないときも。

ホソエガサ

2017/08/27 周防大島 土居

絶滅危惧種のホソエガサ、

通称「人魚のワイングラス」。

土居の海辺、水深2-3mの泥地に、ひっそりと・・・

ほんとうに ひっそりと、

植わっています。

そんなに数はありません。

カイワレ大根よりも か細い茎に、根。

植わるというよりも、砂地にどうにか数本 根が絡まっている、

そんなイメージです。

 

土居の砂浜は砂泥が細かく、

少しの波で砂が舞い上がり、視界が悪くなります。

そして、細雪のように、パラパラと、

傘の上に降りかかる。

私の見たホソエガサはどれも、

その砂にまみれていました。

 

「人魚のワイングラス」というよりは、

「細柄傘-ホソエガサ-」。

その名がぴったりだと、思いました。

 

傘の骨々の間、

黄緑色の粒々が、胞子。

拡大すると、

マスカットのように

艶やかです。

ジョーフィッシュのハッチアウト

2017/08/09 レモンの森

日が落ちて、

夜光虫の瞬きがひとつ、ふたつと増える頃・・・。

水深8mの海底、

几帳面に掘られた巣穴から顔を出し、

辺りを窺うジョーフィッシュ。

再び巣穴に入ったかと思うと、次の瞬間、にょきっ・・・。

溢れんばかり

口いっぱいに卵塊をくわえたそのオスは、

口をパクパクと動かして

卵のハッチアウトを促した。

眼を見開くようにして懸命に行われる

その大胆な行動は、

いつもの臆病な性格の彼らからは、想像もつかない。

ぱら ぱら ぱら と、夜闇のなかに・・・。

産まれたばかりの命はキラキラと光りながら、

瞬きを一つする間に、見えなくなってしまいました。

カブトガニの交接・産卵

2018/07/14 田布施

夏の盛り、真夜中の大潮・・・。

二匹のカブトガニが、ゴゴゴゴゴ・・・

産卵に適した場所を探しに、

繋がったまま、浅瀬へやってきます。

前がメス、後ろがオス。

まるでそういう生物であるかのごとく、

二匹でひとつのまま、移動します。

そして、気に入る場所が見つかったら最後、

2、30分は、そこから動きません・・・。

メスが砂泥の中に潜り込み、卵を産んでいるようです。

その後、産卵が終われば、

繋がったまま 深場へ再び帰っていく・・・。

 

人間の頭よりも大きな、カブトガニ。

2億年の間、その形をほとんど変えていないとか。

太古より続く海の営みの、

すぐ傍らでは工場が、夜も煙を上げています。

古生代から現代へ 陸の景色が様変わりするなか、

まるで円を描くように・・・

この命の連鎖は 一体何度、

繰り返されてきたのでしょう。

イソギンポとコケギンポ 

1/13  金魚のしっぽ

比較的、流れのあるポイントである

「金魚のしっぽ」では、

イソギンポがたくさんいます。

頭の上の皮弁・・・眼上皮弁が、

潮に流されて、ヒューヒューとはためきます。

右から左に、少し強めの潮が流れています。

皮弁がひらひら。あ、こっち向いた。

イソギンポは結構、好奇心が旺盛な魚で、

目が合こともう多く、うれしいです。

外を見つめるイソギンポ。

小指よりも小さい個体でした。

 

次に、皮弁の形が、

イソギンポよりもモサモサとしている

コケギンポ。

イソギンポの住んでいる岩より、

少し深い場所にいました。

巣穴から少し、顔を出して、辺りの様子を伺うと・・・

バッ!

体を半分ほど乗り出しました。

この後、巣穴の中でしたと思われる「うんち」を、

器用に外に掃き出したのでした。

写真に収められず、残念。

また、リベンジです!

 

 

 

ジョーフィッシュのおチビさん

指示棒の先端が

写真の左下端に写っているけれど・・・、

それよりも、

ジョーフィッシュの頭の方が小さい。

頭の直径、5㎜以下。

 

こんなに小さくても、

ちゃんと巣穴を作り、

入り口の周りに貝殻の破片を

敷きつめている。

 

夜になると、

その一つを小さな口でくわえて、

大人と同じように

巣穴にフタをするのだろう。

 

初めてダイビングをした日のこと。

瀬戸内海ー。故郷の海—。

普段、釣りで釣れる、

普通の魚たち。

だけど、

群れの成し方も、泳ぎ方も、

佇み方さえ それぞれ違う。

 

たぶん、魚ごとに、考えてることが違うのね・・・。

 

潜ってみるまで

そんな当たり前のこと知らなくて、

だから、ほんとうに些細なこと

ひとつひとつに、

感動する。

 

温帯の柔らかい色の地味な魚は、

熱帯の魚のような 派手さがないからこそ、

 

観察者はある意味惑わされずに、

表層の向こう側にある 命の輝きに、

直接アクセスできるのかもしれない。

 

だからたぶん、それが楽しい。

生まれ育った海の 海水浴で見える景色・・・

それが全てだと 思っていた。

 

だけど、

中層に浮かび

海底に沈み

目の高さを合わせてみて はじめて、

そこに もうひとつの空間が

あったことに気付く・・・。

それは、まるで宇宙のような

無重力の世界。

 

それが、思いのほか、

手の届く場所にあった。

そのことがとても、意外だった。

 

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