八月の大潮の夜ー。

月明かりが水面を照らす中、

私は、カニと月見をしていました。

サルカニ合戦のカニのモデルとも言われている、
アカテガニです。

彼らは、夏の夜の大潮まわりで、
卵を海に向かって孵化させるのだそうです。

メスのカニです。
お腹に大きな灰色の卵塊を蓄えています。

日暮れと共に山から海に降りてきたアカテガニは、
流木などの陰に、息を潜めるようにして隠れています。
さらにその後、日没から1時間〜2時間くらいの間がピークでしょうか、
一匹一匹、浜から波打ち際へと・・・、

まるで意を決した戦車のように、
走り抜けてゆきます。

そして、海の中に入ると、勢いよくお腹を振動させて、
放仔します。

ゾエア幼生の放出です。


この一連の動きに付随して、水面には綺麗な波紋が生じます。



片手のカニも、一生懸命バランスを取っています。

空を仰ぐように放仔する個体もいます。

しかし波は大小あるため、
せっかくスタンバイしても波がお腹まで来なかったり、

逆に大波が来て足を掬われたり、苦労しているようです。

中には波に攫われて、

力尽き、

陸に上がって来られなくなったカニも
いたようでした。

彼らはライトの光を嫌い、警戒心も強いです。

絶対に渡すもんか、とばかりに、
しっかりと卵を抱え込んでいます。

真夏の夜の砂浜・・・

小さなお母さんガニの、命がけの行動です。
「決死の覚悟」というものを、
見た気分になりました。